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愛は地球を救えるか- ”復活の日” [日本のSF作品]

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ヨーロッパでは病原性大腸菌「O-104」の感染拡大でたいへんな騒ぎです。

病原性大腸菌「O-104」(学名:Escherichia coli O104:H21、日本語名:腸管出血性大腸菌O-104。 別名:病原性大腸菌O-104)は、Weblio辞典によれば、「病原性大腸菌の一種。「O-157」「O-111」と同じ腸管出血性大腸菌であり、「O抗原」の差異によって区別されている。腸管出血性大腸菌O-104、O-157、O-111などは基本的な働きはおおむね同じであり、ベロ毒素を生産することによって大腸の粘液細胞を破壊・死滅させ、出血性の激しい下痢を引き起こし、腎臓の機能が低下する溶血性尿毒症症候群(HUS)などを併発させる。さらに、他の一般的な食中毒の原因菌と比べて、感染力が非常に強い点も共通している」とあり、6月7日現在までの「O-104」の感染者数は、米国を含む13カ国で1500人以上、死者22人となっています。

 

ドイツ北部のハンブルグ市を発生源として欧米に急速に広がり猛威を奮いつつあるこの感染症は、WHO(世界保健機関)が「極めてまれなタイプの大腸菌だ」と発表しているように、感染経路がまだ判明しないため、効果的な予防法を実施できないという大きな問題を抱えています。


世界的パンデミックの危機


感染病と言えば、最近の例では2009年から2010年にかけて世界中に流行し、多くの感染者を出したA-H1N1という種類のインフルエンザ(新型インフルエンザ、豚インフルエンザとも呼ばれる)があります。


新型インフルエンザ(H1N1)の感染地域と感染者数
(クリックすると画像を拡大できます)
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このA-H1N1型インフルエンザによる感染者数は世界で約10万人程度、犠牲者数も500人以下という比較的少ない数(参考資料)でおさまったようですが、1918年~1919年にかけて全世界的に流行した「スペイン風邪」は、感染者数6億人、死者数は4千万人~5千万人に達したと推定されており、当時の世界の人口が18億~20億人程度であったことから見て、約3分の1が感染したという、人類の歴史上最悪の世界的パンデミックとなり世界を恐慌に陥れました。ちなみにこの風邪が流行った時期は第一次大戦の最中でしたが、ヨーロッパ戦線における兵士たちのスペイン風邪による死者数があまりにも大きかったため戦争の終結が早まったと言われているほどですから、その凄まじさが想像できるというものです。


スペイン風邪の患者で満員の米軍野戦病院(Wikipediaより)
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今回の「O-104」が突然変異でさらに毒性が強まったとの憶測がなされており、またスペイン風邪(実際はインフルエンザ)にせよA型インフルエンザにせよ、これらはすべて突然変異の結果、ときたま人間に対して猛威をふるうウィルス変化することは周知のことですが、将来、スペイン風邪の数倍、数十倍の威力をもつインフルエンザ・ウィルスや未知の微生物が出現するかも知れません。


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人類の滅亡を描く『復活の日』


そして、このような、ウィルスによる人類滅亡を描いたSF作品が『復活の日』です。
『復活の日』は知る人ぞ知る、日本を代表するSF作家、小松左京の作品で小松左京は今回取り上げる『復活の日』のほかにも『日本沈没』などの作品でも有名です。
『復活の日』は、1964年にSF小説として発表され、1980年には角川春樹事務所とTBSの共同製作により映画化されています。

Lobyが持っているのもこれと同じ本です
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『復活の日』の主題歌「You Are Love」(歌:Janis Ian)は英語の歌ですが、とてもうつくしい歌ですので、これを聴きながら下記の続きを読んでいただければさらに臨場感が増すかも知れません(?)。(歌詞はページの最後にあります)








『復活の日』のあらすじ
(ネタバレなので読みたくない方は飛ばしてください)


 1982年冬、東ドイツの陸軍細菌研究所から新種のウイルスMM-88が持ち出された。このMM-88はマイナス10℃で自己増殖を始め、0℃を越えると猛烈な毒性を発揮する。その時点での増殖率はマイナス10℃のときの20億倍にもなるという恐るべきウイルスであった。 MM-88はスパイ達の手に渡り、小型飛行機に乗せられ吹雪のアルプスを越えようとしていた。かし、小型機は吹雪のために操縦を誤り山腹に激突、ウイルスMM-88の入ったアンプルは砕け散り、辺りに飛散した。

アルプス山脈

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 春が来て、アルプスの雪もゆるみ始めた…。
 そして、各地に異変が起こり始めた。
ソ連のカザフ共和国で羊の集団死が発生。イタリアでは乳幼児が次々と意識不明に陥ったっ。
医師の多くは「イタリア風邪」と名付けた。
 初夏になると、この死亡率の高い「イタリア風邪」は世界各地で猛威をふるうようになり、そのニュースは、南極の昭和基地にも伝わった。越冬隊員の吉住周三は東京に残してきた恋人、浅見則子の身を案じるのだった。
 その頃、東京は混乱の極にあった。街頭では病死者を焼く煙りが立ち上り、病院は患者たちでごったがえしていた。看護婦の則子も不眠不休で働いていたが、医師たちも疲労と「イタリア風邪」で倒れていく。死の影が確実に忍び寄って来るのを則子は感じた。

 

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一方、ワシントンのホワイトハウスでは「イタリア風邪」に対処すべく閣議が開かれていた。

席上、ガーランド将軍はソ連の陰謀説を唱えたが、その時クレムリンからのホット・ラインがソ連首相の死を伝えた。 アメリカ上院議員のバークレイは「イタリア風邪」の正体は、MM-88である事をつきとめた。それはフェニックス作戦という細菌戦略が生み落とした怪物だったのだ。しかし、もはや遅すぎた。

夏も盛りを過ぎようという頃には世界は壊滅状態に陥った。リチャードソン大統領は、生存の可能性がある南極大陸の各国基地に最期のメッセージを送った。「その
聖域を離れてはいけない。諸君は人類最後の希望だ。一致協力して生きる努力を傾けて頂きたい……」

残されたのは南極にいた者たちだけだった...(写真は昭和基地)

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 南極に863人を残し、世界は死滅した。
アメリカ、パーマー基地のコンウェイ提督を議長に、南極連邦委員会が結成された。そして、地球上にMM-88が蔓延している間、海中を潜行航海して偶然難を逃れたイギリス海軍の潜水艦ネレイド号がその仲間に加わった。
 

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1年が過ぎた。MM-88は依然として世界を征服していた。吉住は相変わらず地震研究に余念が無かったが、そこに意外な事実が浮かび上がってきた。近い将来、アメリカ東部に大地震が間違いなく起きる。それは核爆発に似た衝撃波をアメリカ本土に与えるだろうと思われた。その結果、ARS(自動報復システム)が作動しソ連へ向けてミサイルが発射される。攻撃を受けたソ連でもARSが作動。そして。発車されるミサイルのうち何基かは、今となっては南極連邦の首府であるアメリカ基地に向けられているのだ。
 誰かがワシントンに上陸し、ARSのスイッチを切らなければならない。事情に詳しいカーター少佐が志願した。そして吉住も…。

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二人を乗せたネレンド号が潜航し、ワシントンへ向かう。吉住に密かな好意を抱く女性隊員マリトは、アメリカ基地から退避する砕氷船のデッキから出港を見送った。しかし、カーターと吉住の決死行も空しく、アメリカのもソ連のミサイルは発射されてしまった。

世界は2度死んだ。
 
数年の歳月が流れた。が、アメリン大陸を縦断する一人の男が居た。吉住である。MM-88は核爆発の放射能の影響で恐ろしい威力を失ったのだ。吉住は奇跡的に生き残り、一人南へ向かっていた。死滅した地上を、彼は歩き続けた。南には、仲間が居るのだ、愛する人達が居るのだ……               (映画パンフレットより)              

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映画『復活の日』のデータ

 最初にも述べたように、本作品は1980年に東宝系で公開され、制作費は当初14~15億円を予定するという、日本映画にしては大作となる予定だったのが、制作費は大きくオーバーして25億円にも達したと言われ、興業収入が24億円と発表されたことから、制作費に宣伝費を加えると赤字になったと言われています。

監督は『トラ・トラ・トラ』や『仁義無き戦い』シリーズで有名な深作欣二で、同監督の指揮下、スタッフは日本人とカナダ人の混成チームで、チャック・コナーズ、グレン・フォード、ロバート・ヴォーン、オリビア・ハッセーなどの当時かなり人気のあった外国人俳優も多く起用されています。撮影には1年以上をかけ、海外のロケーションに費やした日数だけで200日を数え、南極やマチュ・ピチュでロケが行なわれ、特に35㍉ムービーカメラで南極大陸を撮影したのはこの映画が世界最初となっています。

 

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映画『復活の日』裏話


ところで、映画『復活の日』に出てくる英国の原子力潜水艦は、実際はチリ海軍の「シンプソン」で、元は第2次大戦中に建造された米軍の「バラオ」級潜水艦の「スポット」が第二次大戦後チリ海軍に売却されたもので、この映画を撮影するためにチリ海軍から「シンプソン」潜水艦を借り受けて撮影しています。

 

シンプソンと同型のバラオ級潜水艦クラマゴア

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また実際に南極海を航行してもらい、浮上、潜行を繰り返すさまを実際に撮影するなど、徹底的に本物にこだわった作品に仕上がっています。ちなみにシンプソンは世界で最初に南極近海を航行した通常型潜水艦であり、当時はまだ周辺の海図も完璧でなかったこともあり、氷山が散在する中の危険をともなう航行でした。当時のシンプソン艦長はこの功績により勲章を受けています。下の写真を見ても分かるように、第二次大戦時に建造された少々老朽化した通常型潜水艦での南極海航行は大変リスクのある操艦だったことを考えると、勲章はおろか昇進もありうるほど、当時としては画期的なことだったわけですね。それが単に映画の撮影のために行われたということに驚きます。


 

氷海のチリ海軍潜水艦シンプソン

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このチリ海軍潜水艦「シンプソン」の『復活の日』南極ロケーションの模様はこちらのサイトに詳しく述べられおり、内容はとても興味深いものです。ただしスペイン語ですのでGoogle Chromeの翻訳機能などを使って日本語に訳して読むといいと思います。なお、『復活の日』にはカナダ海軍の潜水艦オカナガンも撮影に協力しています。

 

 

カナダ海軍の通常型潜水艦オカナガン
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『復活の日』のロケーションが行われた米国のパルマー基地

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チリ海軍の潜水艦シンプソンの潜行、浮上の撮影が行われた場所は、南極半島に近いブランスフィールド海峡とゲルラッシュ海峡です。(クリックすると地図を拡大して見れます)
 
 
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ブランスフィールド海峡
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ゲルラッシュ海峡

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  『復活の日』予告編の動画

 



外国語版の予告編動画

 


VIRUS(復活の日)培地



小松左京は、『復活の日』を書くにあたって当時流行した香港風邪、東昇の『ウイルス』、カミュの『ペスト』『戒厳令』、南極には風邪がないと記された岩波新書の『南極越冬記』、また冷戦時代の緊張下で同じく人類滅亡を扱ったネビル・シュートの『渚にて』を下敷きとしたそうですが、これらのほかにもマイケル・クライトンの『アンドロメダ病原体』に大きな影響を受けたそうです。
『アンドロメダ病原体』は1969年に発表されたSF作品で、1971年には『市民ケーン』や『地球が静止した日』などで有名なロバート・ワイズの監督によって映画化されています。
アンドロメダ株菌という架空の菌によってある町の住民が死滅してしまうところからストリーは始まり、対応する手段がないことから人類が滅亡するかもしれないという恐怖感がヒシヒシと感じられる、リアルな作品です。
なお、2008年にはTVシリーズ化され、日本でも放映されているので覚えておられる方もいると思います。

 『アンドロメダ病原体』DVD版

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2008年の『アンドロメダ病原体』TVシリーズ

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復活の日の主題歌「You Are Love」(歌 Janis Ian)

     What’s the time?
     Where’s the place?
     Why the line?
     Where’s the race?
     just in time, I see you face
     Toujours gai, mon cher


     You are the star
     that greets the sun
     Shine across my distant sky
     when night is done
     You’ll be the moon to light my way
     Toujours gai, mon cher
     It’s not too late to start again
     It’s not too late
     though when you go away
     the skies will grey again
     In the time that remains,
     I will stay
     Toujours gai mon cher


     No regret
     for the light that will not shine
     No regret,
     but don’t forget, the flame was mine
     and in another place, in another time
     Toujours gai,mon cher
     It’s not too late to start again
     It’s not too late
     though when you go away
     the skies will grey again
     In the time that remains,
     I will stay
     Toujours gai,mon cher


     Halfway measures go unsung
     Take your pleasures while you’re young
     Just remember, when they’re done,
     Toujours gai, on cher

                  訳詞付き主題歌はこちらです。


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perseus

こんばんは。
新型のインフルエンザには、職業柄ものすごく困らされました^^;
世界中には、人間にとって未知な病原体がたくさんあるでしょうし、今この瞬間にも生まれているのかも知れません。
特効薬ができるまでは、恐怖ですがコレに関しては、昔からイタチごっこのような感じですね?
O-104の終息、願うばかりです。
by perseus (2011-06-10 23:51) 

millet

「復活の日」あらすじだけでも、ハラハラ、ドキドキでした!
今日、生かされているからといっても明日も生かされるかどうかは分からない。まさに神様のご計画の通りに私たちは生かされているということでしょうか。。。
今日一日を大切に過ごさなくちゃ。
by millet (2011-06-11 13:06) 

駅員3

映画 復活の日は見に行きました[exclamation×2]
とても音楽が印象的だった記憶があります[exclamation]
by 駅員3 (2011-06-11 19:51) 

Loby-M

≫perseusさん、こんばんは。
そうですね。新型インフルエンザは集団でいるところで感染しやすいですからね。そのご苦労分かります。
たしかに人間が、人類が経験したことのない病原菌があるでしょうし、突然変異で抗生物質耐性をもったり、毒性が強まるなどという手の焼ける化け物的な微生物になったりもするのでこれらも要注意ですね。

≫milletさん、私も原作を読んでぞっこん作品のファンになり、映画を見てさらに好きになった小松作品の一つです。
教えられることの多い作品ですね^^b

≫駅員3さんも映画を見られたのですね^^b
サウンドトラックもステキです♪

≫今造ROWINGTEAMさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。

≫az12373938さん、ご訪問&nice!ありがとうございます。

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≫プースケさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


by Loby-M (2011-06-12 08:26) 

春分

「渚にて」も「復活の日」も読んだし、観ています。
「アンドロメダ〜」だけは観ただけですが。
比較的新しいのは「アウトブレイク」もいいですね。
想像される最悪の事態は必ず起こるとも言いますし。
来年が鳥年でないことを祈るばかりです。
by 春分 (2011-06-14 22:18) 

Loby-M

》乾物屋さん、コメント&文字転換ミスのご指摘ありがとうございました。

》春分さんはかなりのSF通ですね!
 「アウトブレイク」は私も観ました^^b
 世界は”想像される最悪の事態”に備えた方がよさそうです。
 でも、現状ではムリのようです^^;
 病原菌対策はいつも後手ばかりですので、
 もし、人類の存続に脅威をあたえる新病原菌が現れても、
 効果的な対策はできないのではないかと思います…

》az12373938さん、ご訪問&nice!ありがとうございます。

》ミソさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。

》etuさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。
 
by Loby-M (2011-06-30 11:07) 

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